2024年6月6日木曜日

「聖霊が吹き込んだら」(日曜日のお話の要約)

聖霊降臨祭・聖餐式(赤) (2024年5月19日)

使徒言行録 2:1-21


 風には色も形もありませんが、何かが動くのを見たり、ほっぺたにフワッと当たったり、何か良い香りが運ばれてきたりして、風が吹いていることがわかります。今日は聖霊降臨祭という教会の大切な記念日です。これは聖霊という神様がイエス様と交代して私たちのところに来てくださったことをお祝いする日ですが、この神様は目に見えない不思議な方なので、聖書の中ではよく風に喩えられるのです。それで今日のお話のタイトルは「聖霊が吹き込んだら」としました。聖霊という神様が風のように優しく、時には激しく私たちの心に吹き込んできたらどうなるでしょう。今日はそのお話をしたいと思います。


 その前に、ちょっとおさらいをして、イースターのことを思い出しましょう。イエス様は十字架にかかる前の日、弟子たちと一緒に晩御飯を食べました。イエス様は、明日十字架にかかって死ぬ、とわかっていたので、弟子たちにいろんなことをお話ししておきたかったのです。


 イエス様は自分が死んでお墓に葬られても、三日後に蘇ってもう一度弟子たちのところに帰ってくることを知っていました。でも弟子たちはショックを受けるだろうと考えて、こうおっしゃいました。「わたしは、あなたがたをみなしごに はしておかない。あたながたのところに戻って来る。」この「みなしご」というのはお父さんもお母さんもいない、ひとりぼっちの寂しい子どものことです。イエス様はあなたたちにそんな思いはさせない、と言われたのです。


 それからこうもおっしゃいました。「父が私の名によってお遣わしになる聖霊が、あなた方に全てのことを教え、私が話したことをことごとく思い起こさせてくださる。」つまりイエス様が天国に帰っても、その代わりにイエス様と同じ力を持っている聖霊という名前の神様が来てくれて、あなたたちを見守り、助けてくださると約束されたのです。


 そんなふうにイエス様は一生懸命お話ししてくださったのですが、弟子たちはそれをほとんど理解できませんでした。なぜなら弟子たちは今までイエス様から何度も何度も「私は十字架にかかって死ぬけれど三日目に蘇る」と聞かされたのに、そんなことはあり得ないと思っていたのです。復活すると言われても何のことかわかっていなかったので、本当にイエス様が十字架にかかったときには、自分達も死刑になるかもしれない、と思って怖がって隠れてしまったのです。


 でも三日目にイエス様が蘇って帰ってきてくださったので、心の鈍かった弟子たちも「これが復活ということか!」とやっとわかりました。ただ、それでめでたしめでたし、ではありませんでした。復活から40日経った時、イエス様は天国に帰ることになったのです。イエス様は弟子たちを丘の上に集め、みんなの見ている前でゆっくりと、天に昇って行かれました。弟子たちはイエス様が雲に隠れて見えなくなっても、いつまでも天を見つめていました。 


 それからまた何日か過ぎました。イエス様が約束してくださった聖霊という神様はいつ来てくださるのか分かりませんでしたが、イエス様が嘘をつくわけがないので、お言葉を信じ、励ましあいながら、毎日一緒に集まってお祈りをしました。ここまでが先週のお話でした。そしてイエス様が天に帰られてから10日が過ぎて、ついにその時が来たのです。


 聖書にはこう書いてあります。「一同が一つになって集まっていると、突然、激しい風が吹いてくるような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。そして炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。」この不思議な炎のようなお姿こそ、聖霊という神様だったのです。


 聖霊様はすぐに目には見えなくなりましたが、どうやら一人一人の心の中にすうっと入って、特別な力をくださったようでした。なぜなら、そこにいた人々は「霊が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話し出した」、つまり外国の言葉で喋り始めたからです。もし、聖霊のお力で勉強しなくても外国語が話せるようになったら便利ですね。でも聖書には、弟子たちが外国語を話せるようになったのは「神様がどんなにすごいか」を世界中の人に伝えるためだった、と書かれています。だから自分が外国旅行するのに便利だから今すぐ外国語が喋れるようにしてください、とお祈りしてもだめなようです。


 ただ、よくよく聖書を読んでみると、聖霊様がこの時いろんな国の言葉を喋れるようにしてくれたのには訳があったことがわかります。「神様が私たちを愛していることを外国の人にも話したい」「イエス様は神様だということを、もっとたくさんの人に伝えたい」という弟子たちのお願いを叶えるため、力を下さったのです。


 聖霊様は目には見えないけれど、海の上をいつも吹いている風のように、私たちの心に優しい波を起こしてくださいます。「聖霊様、イエス様のことをお友達にちゃんと話したいので、力をください」とお祈りするなら、必ずあなたの心の中に吹き込んでくださいます。イエス様のお話を友達にする勇気がないなあと思う時、聖霊様は勇気の出る風で後押ししてくれます。仲良しを教会に誘いたいけどうまく言えなかった、と思う時は、優しい風で慰めてくださるのです。聖霊様はイエス様のことを伝えようとする私たちの味方をしてくださる力強い神様なのです。


 最後になりますが、聖霊降臨祭のことをペンテコステとも言います。これは50という意味で、イエス様が復活してから聖霊様が来られるまでの日数を表しています。2000年前のペンテコステの日、聖霊様の力によってイエス様を信じる人たちはどんどん増えて、大きなグループとなりました。それが今、世界中にある教会や私たちのルーテル教会の元となったのです。ですからペンテコステは教会の誕生日とも言われています。どうぞそれを覚えていてください。 

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