2018年3月30日金曜日

―最近読んだ本からー「イエスの死と復活―ルカ福音書による-」 ヘルムート・ゴルヴィツァー著


―最近読んだ本からー「イエスの死と復活―ルカ福音書による-
ヘルムート・ゴルヴィツァー著
 岡本不二夫/岩波哲男 訳
 発行所  新教出版社
 初版発行 1962331
定 価  190円(古本でお求めください)
 ゴルヴィツァーのこの書は、1938年から1940年にかけて、ベルリンのダーレム教会でなされたルカ福音書についての受難と復活に関わる説教集である。
 受難週、復活祭を前に、この書、ゴルヴィツァーの説教を、読むことができたのは、幸いであった。ルカ福音書の受難物語、復活物語の記事を、通読的に説教していったものが、まとめられている。
 主イエスの受難の記事、十字架の出来事、そして、復活、昇天に至るみ言葉を、よくもまあ、これほど自由自在に黙想し、説教できることであろうか。
 その聖書の深い読み、洞察力は、どこから来ているのだろうか。ルターの国、ドイツの神学の伝統の素地の上に、このような説教が可能になったのであろう。
この説教が説かれたとき、ドイツは、ヒトラーのナチズムが荒れ狂い始めた時
期でもあったであろう。
 それにしても、主イエスのご受難、十字架の意味と、それに続く復活の秘儀が見事に説教の言葉となって受肉している。私の黙想で思いつかぬほどのことではないにしても、よくもまあ、そのような琴線に触れた表現ができるものである。
 その背後には、おそらく地道な神学や祈り、黙想があったことであろう。また、ドイツを襲った、大きな危機と試練の時代背景もあったであろうが、その説教は現代の日本人にも、時代と国を越えて問いかける迫力を持っている。
 今は、レントであって、ちょうど人生の終局、終わりの日を黙想するのにもふさわしい時期であったし、この時期にこの書に巡り会えたことを感謝している。おそらくドイツにしか出ないような説教者であり、神学者なのであろうが、このような説教の言葉が紡ぎ出せるまでには、人知れない研鑚と信仰の戦いもあったのではないか。まったく型にはまらない自在な説教の言葉、黙想から生まれた説教なのであろうが、下積みな聖書との格闘、釈義的な訓練もここに至る背後にはきっとあったに違いない。日本の中からもこのような説教者が生まれていくとき、日本のキリスト教も、更に大きく定着していくに違いない。その説教は月並みな、字句を追うような解説的な説教でないのであるが、それらを地盤とした上でしかもみ言葉の精髄から離れずに大胆に核心に迫るのである。

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