2018年3月24日土曜日

-最近読んだ本から-「新しい天と新しい地-政治的説教-」           


-最近読んだ本から-「新しい天と新しい地-政治的説教-」           
ヘルムート・ゴルヴィツァー著
 土岐正策/菅原一夫
 奥村益良/高岡 清 訳
 発行者  秋山県警
 発行所  新教出版社
 初版発行 1976年1月31
定 価  1600
 ゴルヴィツァーは、19081229日生まれで、19931017日に84歳で天に召されている。この書は4人の人の訳として邦訳されている。
 内容は、いくつかの説教がまとめられている。いずれも濃厚な説教が凝縮されていると言ったらいいだろうか。
 一時代を画した説教者だったのであろう。その説教には、神学生たちはもとより、あらゆる世代、階層の人々がその説教を聞きに集まったそうである。それは老人から、若い娘さんまで、すこぶる高揚があって、会衆は彼の説教に喜んで耳を傾けたらしい。 ドイツにあっては、ナチの台頭や激変の時代の中で、彼は人々をみ言葉によって導いたということだろう。秘密警察が混じる礼拝の中でなされた説教もあるようだ。そして、現代にいたるこの苦悩する世界で、彼はイエスの譬えや聖書の示す真理を語り続けたのであろう。 加藤常昭先生はその生の声、司式し祈る姿に実際に出くわされて、その荘厳な祈りや司式の姿勢について、しばしば懐かしそうに口にされたことがある。 そして、この説教集一つを読んでみても、そのようなゴルヴィツアーの人格が切々と伝わって来る。 私どもルーテル教会の伝統では、個人の魂の救いを中心に説いて、あまり政治やこの世の中の動きには疎い傾向がなきにしもあらずであろう。しかし、彼は、私ども一人一人のふるまい、信仰の在りようがまわりの社会、ひいては世界とつながっていると説き、時の世界の出来事へのやむことのない関心がみ言葉集中と共に説教を貫いている。 また、従来の一人でも多くに洗礼を授け、改宗を迫って世界制覇してきた宣教・伝道の在り方に疑問を呈している。そして、この世界にわずかなキリスト者、新しい神の民が存在すること、クリスチャンの希少価値と言えば語弊があろうかそのこと自体に周りの世界は、自分の生き方を問い直す喜びを見出すという。ゴルヴィツァーもまた、使徒教会時代の使徒たちの説教への回帰を示す説教者と言えるのではないか。

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