―最近読んだ本からー
「祈る―パウロとカルヴァンとともに」
ルドルフ・ボーレン著
(川中子 義勝[訳])
2017年11月30日 初版発行
定価(本体2700円+税)
発行所 教文館
今年は、宗教改革500年の記念すべき年である。マルティン・ルターの95箇条の提題に始まった宗教改革のもう一人の忘れてはならない人物は、ジャン・カルヴァンである。
このほど、説教塾ともつながりがあり、加藤常昭先生の説教学の先生でもあるルドルフ・ボーレン著の「祈る」という本書が川中子義勝先生の翻訳で出た。名訳であると思う。祈りに関する著書は、たとえばルターの大教理問答書の主の祈りに関するものなど多数あるが、本書は、「パウロとカルヴァンとともに」と副題がついているように、特にパウロ書簡のテモテへの手紙第一、第二を拠り所にしながら、文字通り「祈る」作業を、ボーレン先生を含めて、パウロ、カルヴァンの三人で進める体裁をとっている。
最初読んでいくと、パウロの手紙を、カルヴァンが行った注解の言葉をずっと紹介しているのかと思って読んでいったが、カルヴァンの注解や同労者などに出した書簡の言葉は、いずれも終わりに記されていて、その間の橋渡しの言葉は、詩人でもあるボーレン先生のパウロのみ言葉をめぐる思索の言葉であり、「祈る」ことそのものであることが分かった。神学とは祈りである。
ボーレン先生は、改革派の神学者で、カルヴァンの流れから、近くでは、バルトやトゥルナイゼンなどと親しい関係にあられた。親日家でもあり、日本の「源氏物語」などに関する著述もなさっておられるようである。 今回の著書を通して、ボーレン先生の神髄に触れた思いである。私どもは、ルーテル教会員であり、マルティン・ルターの著書を通して、信仰による義から始まって、義人にして同時に罪人、生涯は悔い改めの連続など、それは、プロテスタント一般に、あるいはカトリック教会においても、承認されているといっていい信仰生活の宝であり、宗教改革の出発点といっていいルターの教理であるがそれを前提とした上で、カルヴァンはそれを更に教会生活の上に受肉させ、信仰の聖化、浄化と言おうか、祈りにおいて教会制度の確立を目指したのではないか。
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