2017年12月14日木曜日

「王道―21世紀中国の教会と市民社会のための神学―」

―最近読んだ本からー
「王道―21世紀中国の教会と市民社会のための神学―」
王艾明 著
(松谷曄介[編訳])
20121126日 第1版第1冊発行
定価(本体2300+税)
王艾明牧師は、現代の中国の代表的な神学者の一人とのことである。1963年、江蘇省生まれとのことであり、一度その講演をお聞きし、そのさわやかな語り口に、好印象を憶えたことを、つい昨日の事のように思い出す。この本「王道」の編訳者でもある松谷曄介牧師も、説教塾での講演に、通訳として同行されていたが、その流ちょうな通訳にも感心させられたことも記憶に新しい。そして、この本のもともと優れていることもあろうが、訳した松谷牧師(1980年生まれ)の翻訳や知見の優れていることも、この書を読みやすくしている要因ではないかと思う。現代の中国のキリスト者は、7000万人とも、ひいては9000万とも推定されるらしい。かつては、中国共産党の政府のもとで、キリスト教は、マルクス主義に反するものとして、否定されていたとのことだが、現在では、改革も進み、経済も自由化の中にあって、中国指導層の中にも、洗礼を受け、教会につながる人たちも出てきているという。それにしても、なお共産党の一党支配の政権下にあり、中国での教会の前途には大きな課題が山積していることは容易に想像できる。「王道」とは、孫文が用いた方向を指し、「覇道」に対して、道徳を重んじて、武力に走らない行き方を指すらしい。王艾明先生は、中国の教会が伸びるためには、中国のこれまでの精神的礎柱であった儒教の、2000年以上に及ぶ教えから出来上がっている文化を十分に理解しながらも、キリスト教の初代教父たち、原始教会の神学や宗教改革者たちの神学に絶えず立ち返って、自らを検証していくことが不可欠の作業であると主張されている。今の中国の教会には、3自教会と家の教会のような二つの流れがあるが、いずれにしろ、「教会性」「教会論」が不足しているというのである。今年は宗教改革500年記念の年だが、王先生は、マルティン・ルターの健全な教理の回復と、その上に立ってのジャン・カルヴァンの教会制度・教会秩序の確立をもたらした神学の重要性を説いておられる。教会が各国で異なる歴史を持ち、神学もそれぞれのコンテキストに応じた展開が必要である。宗教改革500年記念の年、ルターとカルヴァンの両者が日本のルーテル教会でも問い直されるべきだろう。






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