2021年12月27日月曜日

「よろこびの知らせ」 クリスマスイブ燭火礼拝(2021年12月24日)午後7時 お話の要約

ルカによる福音書 2章1-16節

 皆さんは「ブルータス、お前もか」という言葉を聞いたことがあるともいます。信頼していた者の裏切りを表す言葉として有名です。この言葉は、ローマの政治家ユリウス・カエサルが暗殺された時、暗殺者の中に友人のブルータスがいるのを知ってショックを受け、漏らした言葉です。

 このユリウス・カエサルの死後、彼の養子だったオクタヴィアヌスが初代皇帝に就任します。皇帝になった彼は「ローマの平和」と呼ばれる、約200年にも及ぶ帝国の全盛期を実現した人物として人々から称えられ、アウグストゥスという名を与えられます。

 いきなりなんでローマの歴史?と思われるかもしれませんが、先程読みましたルカによる福音書の2章1節に登場する「皇帝アウグストゥス」という人物がこの人なのです。神と称えられるほどに華やかな功績を持った人物でしたが、その影には虐げられた人々が存在しました。

 イエス・キリストはこの皇帝アウグストゥスの支配するイスラエルの国のベツレヘムという町でひっそりとお生まれになります。その誕生は傍目に見れば、決して恵まれたものではありませんでした。


 身重であったマリアが夫のヨセフと共にナザレからベツレヘムへの旅しなければならず、生まれたばかりの赤ん坊を飼葉桶に寝かさなければならなかったのは、皇帝アウグストゥスが自分の支配する領土に住む住民から漏れなく税金を徴収するため、先祖の街に戻って住民登録をするよう強制したからだったのです。こうしてイエス様はローマ帝国に苦しめられるところからその誕生の物語が始まります。

 皆様もご存知の通り、ローマといえば今ではイタリアの首都として有名で、その中心にはカトリック教会の中心バチカンとサン・ピエトロ寺院があります。かつてローマ帝国の横暴ゆえに馬小屋で誕生したイエス様が、今は壮麗なキリスト教会で崇められている。驚くべき逆転劇は、不幸に見えたことの裏側に幸いがあり、人の思いを遥かに超えた神様の御計画があることを私たちに伝えているのです。


 仮に皇帝の命令がなければ、マリアとヨセフはベツレヘムに行くこともなく、イエス様はナザレの一般家庭で誕生し、親族一同のお祝いを受けていたでしょう。そうなると、クリスマス物語はずいぶん変わったものになったに違いありません。しかし、旅先での過酷な出産は、思いも掛けない人々をイエス様の元に招き寄せました。イエス様誕生の知らせを聞いて真っ先に駆けつけたのが、ベツレヘム近郊で野宿する羊飼い達だったのです。


 当時の羊飼いは24時間羊の世話をし、泥棒や獣から羊を守る厳しい労働でした。労働の割に賃金は安く、教育を受ける機会もほとんどありませんでした。働いても働いても貧しさから抜け出せる見込みもありませんでした。彼らは貧しさゆえにユダヤ教の戒律を守ることのできない下層階級の人々でした。

 イスラエルは祭司が政治も司る宗教国家でしたから、戒律を守れない羊飼いたちは神様に見捨てられた存在とみなされていました。町で暮らす一般の人々から見ても、羊飼いたちは礼拝にも行かず、神様から与えられたさまざまなルールも守れない、無知で無学で不信仰で不潔な人々に思えました。はっきりいえば、羊飼いたちは一般市民から差別されていたのです。


 しかし羊飼いたちは、むしろ素朴な信仰を持った人々であったようです。劣等感にまみれ、未来への希望も持ってはいなかったけれど、預かった羊を命懸けで見守ることには誇りを持っていました。ですから神様は同じように私たちを見守ってくださっている。そのような思いだけは失わなかったのです。その信仰は闇の中で自分を照らしている満天の星のように、彼らの心の一筋の光でした。


 この夜、羊飼い達の元に天使たちが現れたのは偶然ではなかったのです。神様の御使である天使たちは「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった」と告げ、「この方こそ主メシアである。あなたがたは布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう」と、高らかに歌ったのです。

 神の御子がどういうわけか自分たちが会いに行けるすぐそこにおられる。いやむしろ自分たちに会うために、王宮でも普通の家でもなく、貧しい馬小屋の飼葉桶の中に寝かされているのだ。何故なら天使は言ったではないか「あなた方のために」と。これを信じないで何を信じるのだ。


 「よろこびの知らせ」というものは、どんな素晴らしい内容であっても、自分に向けられていると受け止めなければ、何の益にもなりません。羊飼いたちは神様からの知らせを自分に向けられたメッセージであると確信し、急いで行動に移しました。こうして彼らはどんな高貴な身分の人よりも先に、イエス・キリストの元に招かれ、そのお誕生を祝うことができたのです。


 この物語は、羊飼いたちががこののち革命家になって世の中を変えたとか、そういうことではありません。ただ、彼らが天使の言葉を信じて希望を抱いた、その心の素直さが福音書に記され、伝えられ、今日も闇の中で苦しむ人の心に光を投げかけ続けるのです。そして羊飼いたちと同じようにそのメッセージを受け入れた人の心にあかりが灯るのです。これこそが、神様の望まれた、民全体の、全ての人への、大きな喜びだったのです。

 私たちはこの1年、様々な出来事がありました。良いこともあれば嫌なこと、例えば病気や怪我、思わぬことに苦戦したり、闇や孤独を感じたりするようなこともあったでしょう。

 しかし、そうした中にも、神様が共にいらっしゃることを信じて今夜こうして集まりました。今、皆さんが持っておられる一つ一つの灯火は小さなものですが、かつての羊飼いを照らした星あかりと同じように、闇を照らし、生きにくい人生を歩んでいる一人一人を導くあかりとなるのです。




イブ礼拝の様子をお届けします

今回もリーベクワイヤの皆さんの

美しい音色が小さな会堂に響き渡りました


夜なのでこども聖歌隊はお休み

代わりに「おとな聖歌隊」(仮)が賛美しました










少しわかりにくいですが
今年も竹燈籠が園庭に登場しました
小さくなってしまった聖壇の蝋燭を
入れてあります


瓢箪ランプは蝋燭を入れると燃えてしまうので
LEDライトでお客様をお出迎え

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