2019年10月2日水曜日

憐みに生きる(日曜日のお話の要約)

聖霊降臨後第16主日礼拝(緑) (2019年9月29日)
アモス6:1-7 Ⅰテモテ 6:2C-19 ルカ16:19-31

 本日のお話のタイトルは「憐みに生きる」といたしました。「憐み」というと、何やら上から目線のような響きを感じる方もおられると思いますが、福音書を通して「憐れみ」について聞いてまいりましょう。

 本日の聖書箇所は単純に読んでしまえば、この世で金持ちだった人は地獄へ行き、この世で病いに苦しみ、貧しかった人は天国へ行く、と読み取れます。しかしよく読めば、お金持ちとして豊かな生活を生きることが悪い、とは一言も書いていません。その逆に、貧しく慎ましやかに生きることが立派だ、とも書いていません。大切なことは、その人がどのような生涯を送るにせよ、慈愛の心を忘れてはいけない、というテーマが込められているのです。

 この例え話に登場するこのお金持ちは、特に何も書かれておりませんので、ユダヤ人らしく自分の才覚によって富を得た人でしょう。 
 一方、そのお金持ちの家の前に、ラザロという名前の貧しい人が路上生活をしていました。ラザロはできものだらけの体を横たえ、「せめて金持ちの食卓から落ちる物で腹を満たしたい」と願っていました。
 この二人、全く顔を合わせる機会がなかったとは思えません。ユダヤ人の学ぶ律法の書には、貧しい者に施しをするよう再三勧められていますから、お金持ちも時には施しをしたと思われます。だからと言って、本気で同情したわけではありません。聖書に書いてあるから施しの一つもしておこう、という程度の考えだったでしょう。

 イエス様はこのお話の中で、この二人をほぼ同時に死なせます。ラザロは天使たちによって天国へと招かれ、信仰の父アブラハムのすぐそばに連れていかれます。ここでのアブラハムは神様の代理人のような役割です。
 一方お金持ちはおそらく立派なお葬式をして、立派なお墓に入れられたのでしょう。しかし彼は死んでから陰府でさいなまれたのです。金持ちの行った場所は、私たちのイメージする地獄に近いような気もしますが、たとえ話ですから、描写に心を奪われすぎないように注意していただければと思います。
 ともかくも、死後の世界では二人の立場が逆転します。その時、お金持ちは忘れていた心を思い出します。それは自分以外の人に対する配慮、憐みの心でした。
 お金持ちは天国にいるアブラハムに懇願します。「私の舌を冷やしてください、それが無理なら、私の五人の兄弟が、こんな苦しい場所に来ることがないよう、ラザロを遣わして言い聞かせてください」
 しかし、アブラハムは答えます。人間が知る必要のあることは「モーセと預言者」、すなわち聖書を通してはっきりと教えられている。お前も5人の兄弟も当然聖書を読んだことがあるはずだ。その聖書を差し置いて他に教えを求めても、お前の兄弟も自分の考えや生き方を変えることはないだろう。
 
 生きている間に聖書の教えを軽んじ、憐れみの心を持つこともなく生きてきたお金持ちにとって、誠に救いのない結末となってしまった、とイエス様は言われたのです。非常に厳しい教えと言わざるをえません。

 ところで、イエス様はこのお話を伝えるにあたり、できものだらけの貧しい人を「ラザロ」という名前で呼んでおられます。「ラザロ」には、「神は助けられた」という意味があります。転じて「神の憐みによって生きる」という意味をもった名前です。
 私たち一人一人も、神様の憐みによって生かされたラザロに等しい存在です。何一つ自慢になることをしたわけでもなく、むしろ罪にまみれた生き方さえしてきたのに、神様は私たちに目を留め、憐れみをかけてくださいました。私たちを愛するがゆえにイエス様は十字架に掛かって私たちの代わりに罰を受けてくださいました。イエス様の憐れみによって私たちの罪は赦され、地上の命が終わったならば、天国へと登っていくことができるのです。
 それなのに私たちは、まるでこの例え話に登場したお金持ちのように「やるだけのことはやった」「私はそれほど悪人ではない」と開き直ることがあります。自分には罪がない、と考えてしまうのです。

 そんな時、私たちはこの世において罪に苦しむ人、貧しさや、病に苦しむ人の存在を忘れています。イエス様はみ言葉を通して、そういった人々に目を向けるよう繰り返し教えてくださいます。憐れむ心、その痛みに祈る心、場合によっては深く共感する心を抱いて生きるよう、私たちに常に教えておられるのです。

 本日共に読んでまいりました聖書の教えは、たとえ話を通してイエス様が私たち弟子にお与え下さった心構えです。私たちが「憐みの心」を抱いて生きるとき、神様が、イエス様が大いに喜ばれることを覚えて歩んで参りましょう。


市内の「りんご並木」のりんごです
美しく色づいてきました



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