―最近読んだ本からー
「キリスト教神学入門」A・E・マクグラス著(神代真砂実訳)
発行 2013年7月25日 6版発行
発行所 教文館
定価 8100円(本体価格7500円)
ようやく、この書を読み終えることができた。このような本に出会ったことに驚いている。前回にも書いたが、このような神学入門書はこれまでなかったのではないか。著者がその序文にも書いている通り、この書は初めて神学を学び、聖書を学ぶ人にも、かなり信仰歴を持ち、教会生活を送り、あるいは、牧師のように、宣教と牧会に携わる人にとっても、大きな支えとなる神学書といえよう。
キリスト教の2000年にわたる神学の歴史にとどまらず、聖書と教会にかかわるあらゆる問題、哲学や文学や世界観の壮大なドラマが、この書物一冊の中に凝縮されて、まとめられている。
このような書物がどうして、可能になったのだろうか。それは、著者マクグラスが、キリスト教を発見する前には、マルクス主義に傾倒していた時代があったことや、神学者になる前には、生物学で博士号を取っている、その幅の広さにもよっているのではないか。
今まで、分からないながらも、ルターや、色々な思想家や文学者や神学者の本を、アト・ランダムにかじったりしてきたが、その背景や位置づけが分からなくて、理解できない事が多かったのである。
しかし、この神学入門は、現代にいたる主だったあらゆる神学者や哲学者、さらには文学者や科学者、思想家がどこに位置付けられるのかを、鳥瞰的にとらえることを可能にしてくれる。
複雑な神学的な議論の争点を、分かりやすく紹介してくれる。人間にまことの救いはあるのだろうか。イエス・キリストをどのように、教会は、そして人々は理解してきたのか。宗教改革者マルティン・ルターの、膨大な神学者たちにおける位置づけについても、大きな整理をしていくうえでの手掛かりが与えられたように思う。この本は、著者も言っているように、辞典のように必要に応じて、これからも取り出しては、大事な論争のポイントをつかんでいくうえでも有益であろう。これからの教会の行方を見通していくためにも、大切な書となるであろう。著者は、聖公会の神学者ではあるが、宗教改革者、特にルターの神学に、深い造詣を持っていることも、親しみを抱かせてくれる。
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