最近読んだ本からー「真実な交わり
―伊藤邦幸の志を受け継ぐためにー」
発行所 キリスト教図書出版社
編 者 田村光三・武井陽一
2009年12月10日 発行
定価:2500円(+税)
伊藤邦幸先生の父は、無教会派の伝道者である。この本の後ろに出ている「伊藤邦幸略年譜」を見ると、彼は1931(昭和6)年6月28日のお生まれで、天に召されたのは、2003(平成5)年8月8日であって、62歳1カ月の生涯であったことが分かる。恐縮ではあるが、私の母が今年の10月で米寿を迎えようとしているので、調べると伊藤先生よりも1歳年長ということになる。この激動の時代を駆け抜けた一人の優れたキリスト者として、この本を通して、私たちは主イエスに従い、主を仰ぎ見て、神の栄光と貧しい人々、今なお苦しんでいる低開発国の人々に仕えた、主イエスの弟子の記録を知ることができる。彼は、とにかく、勉強熱心である。ひたむきであり、理科系も、文科系もこなせた人である。そのような先生にも、大きな罪の出来事があったという。それを、先生は、生涯忘れず、この本のタイトルにあるように「真実な交わり」を求め続けたのである。この本では、伊藤先生が若い人たちに読んでほしい本、百冊とか、読書の仕方などまでが、詳細にそのリストアップされたものの一覧表まで挙げられている。たとえば、1961年選の「岩波文庫 100冊の本」などは、とても良いなどと、指摘しておられ、表になっていて、そこには今でも十分に読むべきであろう古今東西の名著が並び、彼の視野の広さが想像できる。先生は、長い勉学の後に、やがて医師となる聡美夫人と、国際結婚し、ネパールのオカルドゥンガ診療所において、日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)の派遣医師として、貧しい人たちに、10年以上も仕えることになる。日本に戻っている時には、「山猿庵」とか「風声寮」といった青年たちとの読書会や共同生活を共にして、後輩たちを育てて行ったのである。6人の子どもにも恵まれ、彼らにとっては父母ともっと甘えたい時期でもあったであろうが、伊藤夫妻は、土日も自宅を開放して、たとえばヒルティの「眠られぬ夜のために」を原著で読み進めたり、大学で御自分の提出した「漱石の『心』にあらわれた罪の意識について」等々を学び合ったりしていったのである。聡美夫人は、オカルドゥンガに戻るため富士山頂付近で訓練の登山中、遭難滑落死する。伊藤邦幸先生も62歳の若さで、米国で脳幹梗塞を起こし、翌年日本の地で召されたのである。
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