―最近読んだ本からー「『キリスト者の自由』を読む」
ルター研究所 編著
発行者 大石昌孝
発行日 2016年10月1日
発行所 有限会社 リトン
定 価 1000円+税
日本福音ルーテル教会が、宗教改革500記念で、ルター研究所に依頼して、出版された、記念図書4冊のうちの1冊である。いわゆる「キリスト者の自由」の徳善先生による抄訳が最初に記され、主要テーマをめぐって、ルター研究所員6名のまとめた論稿が中心となっている。そのテーマとは、①自由、②律法と福音、③信仰義認、④全信徒祭司性、⑤信仰と好意、⑥愛の奉仕の6つであり、これは、2016年のルターセミナーでの先生方の発題がもとになっている。この1冊に、マルティン・ルターの神学が凝縮して、紹介されていると言っていいのではないか。信徒にもわかりやすく書かれているが、ルターが生涯をかけて伝えようとしたことの神髄が、この本1冊を読めば大体理解できると思われる。
ある篤信の信徒の方は、もうこの本を4回は精読したと言っておられた。ルターは、カルヴァンのように体系だった組織神学といえるような詳細で綿密な教科書的なもの、たとえば「キリスト教綱要」(全7巻、新教出版社、渡辺信夫訳)のようなものは生涯残していない。あえて言えば、この短いが最も有名な「キリスト者の自由」が、1520年、彼がまだ37歳のころの宗教改革(1517年10月31日、95箇条の提題)直後ではあるが、彼の神学の要約といえよう。「キリスト者の自由」そのものは、徳善先生の幾つかの訳のほか、岩波文庫「新約 キリスト者の自由 聖書への助言」(石原謙訳)が入手できる(518円)。 「キリスト者は、すべてのものの上に主、君主である。」「キリスト者は、すべてのものに仕えるしもべである。」このあまりにも有名な2つのテーゼの上に、ルターは、キリスト教の神髄を伝えようとしている。最初の部分は、神学そのもの、救いがどのように私どもに与えられているか。信仰のみで救われるということが聖書によって説き明かされる。そして、終わりは救われたキリスト者はどのように生きるか、愛の奉仕に生きることが示されていく。信仰のみにより、あくまで恵みによって既に救われているのであるが私たちは肉体をもってこの世の中で生活していかざるを得ない。完全に清くなったわけではなく、毎日の言葉と良き行いにおいて、信仰を表し終わりの日まで周りの人々にそれを証ししていくしかない。私たちは全ての者の主であり、故に全ての者の僕なのだ。
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