2018年10月5日金曜日

―最近読んだ本からー「『キリスト教綱要』物語                どのように書かれ、読まれてきたか


―最近読んだ本からー「『キリスト教綱要』物語
               どのように書かれ、読まれてきたか
発行所 教文館
著者 ブルース・ゴードン 訳者 出村 彰
2017830日 初版発行
        定価:3200円(+税)
『キリスト教綱要』は言うまでもなく、宗教改革者ジャン・カルヴァンの代表的著作である。私共は、ルター派であり、昨年宗教改革500年を祝ったが、ルターと共に、宗教改革者としての彼の名は忘れられてはならない。私は、水俣教会に4年間牧師として在任したが、そこで出会ったチッソの研究所長さんの奥様は、日本基督教団の熱心な信徒であられた。ご主人は、ルーテル教会に深く傾倒されていたが、奥様は、教会を完成したのは、カルヴァンだと言われていたのを思い出す。
 今、私も「キリスト教綱要」を少しずつ読んでいるが、膨大な書物であり、その内容・骨格をつかむのは至難の業だと思う。ルターは、組織神学は打ち建てなかったと言われる。聖書を緻密に体系的にとらえたのは、カルヴァンなのであろう。ルターは、聖書講解でも、自分の気に入ったところを集中的に説いているのに対し、カルヴァンはほとんど聖書全体の講解を几帳面に残しているようである。
 さて、本書は、2017830日に、邦訳が初版発行されている。「キリスト教綱領」がどのように書かれ、読まれてきたかを、当初から現代世界に至るまで、広範な資料に基づいて、考察している。「キリスト教綱要」ほど、色々な評価がなされ、また世界に影響力を及ぼした書物は稀であることを、各時代の神学思想や歴史と突き合わせて、紹介している。宗教改革から500年の歩みの中で、この書がどのように読まれ、あるいは誤解され、多様に影響を与えて来たかを説いている。そして、それは、カルヴァン本人の信仰、神学、生活、行動力がいかに理解され、あるいは誤解され、今日に至っているかを物語っているのである。カルヴァンの神学について、私はあまり知らない。二重予定説や聖餐についての象徴説、また異端のセルベトをジュネーブ市参事会が火刑に処したことにカルヴァンが加担した出来事など、背景を知らずに聞かされて、その実体を知らずにいることも少なくない。特にルターとの対比において、カルヴァンを学ぶことも必要なのではないか。現在、アジアやアフリカでのキリスト
教の成長は著しいと言われ、そこでのカルヴァンの影響力は見過ごしにすることはできないと指摘されている。ルターの、どちらかといえば保守的な神学に対して、カルヴァンから学ぶべきところも大きいのではないか。一読に値する。

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