―最近読んだ本からー
「祈り」O.ハレスビー著(東方信吉 岸千年訳)
1954年3月25日発行 定価980円
1982年10月20日20版
発行者 森 優
発行所 聖文舎
この書は、私共に祈ることの大切さを教えてくれる。祈り、これほど、大事だとわかっていながら、難しいものはないとしばしば感じてきた。ハレスビーは、北欧、ノルウェーのルーテル教会の牧師であり、神学者のようである。当時、ハレスビー博士の名は、国内外で小さな子供たちでも知らない者はいなかったほどだという。この人もまた、ルターの系譜につながる人であることがわかる。三代にもわたって熱心なクリスチャンの家庭であったか、あるいは牧師の家系であったと書いてあったと記憶する。そのような環境で育った人にして初めて生まれてきた書物といえようか。
本書は第1章から第11章にわたって、祈りにかかわるテーマで書かれている。全部で205ページほどの聖文舎のシリせーズの1冊である。信仰に根差した、堅実な祈りについての、珠玉のような言葉が全体に貫かれている。北欧の堅実な信仰から生まれてきたものなのだろう。いわゆる北欧のルンド学派に属する神学者なのだろうか。著名な人だったらしく、本書の後ろの案内にも、「みことばの糧・365日の黙想」(岸恵以訳)(全書1600円)等も挙げられているが、ハレスビー本人は、このような祈りの本を以前から書きたかったが、どの本を書くにも増して難しい試みであると記している。最初の方で、祈りは、私たちの吸っている空気のようなもの、呼吸のようなものでそれをしないほうが不自然であると言っている。そして、祈りは、キリストが私たちの家の外で戸を叩いて、待っておられるのであり、私たちが、ただ心を主イエスに向かって開け放つことから始まるという。自分の無力を知って、祈りの霊に身をまかせ、み霊に聞いていくことが肝心である。この書を読みつつ、それの共訳者でもある岸千年先生の生きざまが思い起こされた。また、この著者と同じような祈りに生きた宣教師の恩師の生涯や、今もなお祈りつつ導いてくださっている牧師や信徒の方等の生き様が想起される。ルターの小教理や大教理の「主の祈り」の解説・説教を、祈り・信仰全般に渡って展開したものであるということもできよう。主イエスが説いた祈りや断食などについてのみ言葉や、祈りにかかわる旧約聖書、新約聖書のみ言葉を、静かな黙想と鋭い洞察によって把握し、祈りの本質を捉え得た名著であると思う。日々の歩みを祈りの霊によって導かれたい。
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