2017年4月19日水曜日

「宮沢賢治童話全集 新装版 6 なめとこ山のくま」

―最近読んだ本からー
「宮沢賢治童話全集 新装版 6 なめとこ山のくま」
宮沢賢治
                発行 2016930日    
                発行者 岩崎弘明
                発行者 株式会社岩崎書店
                定価  2138円 
 宮沢賢治の「なめとこ山のくま」を読みなさいと、ある先輩牧師先生から薦められた。さっそく取り寄せてみたが、しばらくたってしまった。「なめとこ山のくま」は、岩崎書店発行の「全集の新装版の6」に納められている。
賢治が故郷の岩手県を中心に題材として残されている民話、伝説などから作った同系列の童話が他に8篇、載せられている。
宮沢賢治については、詳しく知らないが、晩年、日蓮宗の熱心な信徒であったと聞いている。しかし、一方では、キリスト教の影響も大きかったのではないかとも聞かされている。
若干37歳の若さで、1933年(昭和8年)に病気でなくなっている。日本には、今も各地に古くからの伝説や民話が残っている。「なめとこ山のくま」もそのような日本の地方、特に賢治が生まれ育った岩手の山奥に伝わる伝説から、賢治が作品としたもののようである。

「小十郎」が主人公とも言えるなめとこ山の猟師である。そして、むしろ、真の主人公は「なめとこ山のくま」たちである。小十郎は生きるために、熊を撃ち、その毛皮や内臓などを、安いお金で、町に下りていって売り、酒に変えたり、一家の生活の糧にせざるをえない。熊たちも、小十郎を憎んでいるわけではなく、一匹一匹と仲間を失いながらも、なめとこ山で共生しているのである。ある夜、小十郎は愛犬と森をめぐっているとき、母熊と小熊が向かいの谷の景色を眺めているのに出くわす。小十郎もまた、なめとこ山の熊たちを、この上なく愛していたのである。やがて、小十郎も、熊に襲われる日が来る。そのしかばねを、熊たちは真ん中にして、集まり、葬るかのように群がる。なきがらとなった小十郎の顔もどこか笑っているようであった。そのような自然と動物と人間が一体となって生きていた日本の昔の伝説から、作られた童話が、この全集の6巻に納められている。かなりの年齢である日本人には、だれでも懐かしくなる、そのような童話が9篇、集められている。方言も美しく、文学者賢治が聖霊に促されて、紡ぎ出した言葉の宝庫がここにあるのではないか。

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