2016年9月13日火曜日

―最近読んだ本からー「聖書の読み方」(加藤常昭著)


―最近読んだ本からー「聖書の読み方」(加藤常昭著)
    日本キリスト教団出版局(2007625日 新装25版発行1100円+税)


 加藤常昭先生が、初めて、牧師としての歩みの中で書かれた記念すべき書物である。時に、先生は、32歳の若さであるが、87歳の現在の加藤先生の基本姿勢は、変わっておられないことに驚きを感じる。
これは、先生が、5年間、最初の伝道地として、過ごした金沢市の若草教会時代に書かれたものである。
全国の女子高校生の集まりで、語られた、あるいは話し合われた内容が下地となっている。
聖書とはどのように読めばよいのかを、具体的に、山上の説教の「幸いなるかな、心の貧しき者は」などの七福の主イエスのみ言葉等、聖書の言葉を自在に引用されながら、展開していく。
そして、聖書を読み、理解していくうえで大切なことを、高校生たちの七福についての感想文や寄せられる疑問などから、共に考え、それを分析する形で、説いていかれる。聖書は、一人で読んでいても理解できるものではないことを、たとえば、作家太宰治の聖書との取り組みをあげて説いておられる。太宰は日本の優れた文学者であり、その才能を持って、晩年には4年もかけてマタイ福音書を読み込んだという。しかし、結局は、彼の文学者としての歩みは、自死に至ったのであった。
この著書の中で、加藤先生は、難しい注解書を取り出したり、ことさら、神学や教理を用いて、聖書を説き明かそうとしたりはされていない。
ただひたすら、求道者の身になって、一緒に聖書を深く味わい、聖書がよく分かるように、共同の学びや、教会に行って、礼拝の説教や、聖書研究会などに出席することを、勧めておられる。
しかし、初任地での伝道の中で、書かれた先生の初めての書物は、現在87歳を迎えられている先生の牧師としての深みと言おうか、神学と言ってもいいだろうが、それを既に備えられていると感心させられるのである。

この本は、求道中の人にふさわしい本ではないだろうか。それと共に、長らく信仰生活を経た人にも、聖書を理解する上で改めてよき案内役を務め得る本であると思う。加藤先生が、説教学に取り組みつつ、教会の牧師という第一線で、聖書を説いてやまずに来られた秘密を、この書において感じさせられる。

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