2018年11月14日水曜日

―最近読んだ本からー「聞き書き-加藤常昭-説教・伝道・戦後をめぐって」


―最近読んだ本からー聞き書き-加藤常昭-説教・伝道・戦後をめぐって」
         発行所 教文館
著者 加藤常昭、井ノ川勝、平野克己、朝岡勝、森島豊
編者 平野克己
発行 2018730日 
        (定価):3000+税)
 かつて、私事ながら、岳父西恵三は、毎週の説教を立派にやりこなすことは、至難の業であると、私に語ったことがある。その西の父は、北陸で日本基督教団の牧師であったが、説教が下手なので、中途で、学校の教師になったと、いつであったか、軽妙な語り方で話してくれたことがある。
 さて、加藤常昭先生は、類まれな才能に恵まれ、ひとえに牧師の道を歩まれた方であり、現在89歳で、今なお、後進の特に説教の改善、進化のために説教塾の主宰をなさりながら、ご活躍の先生であり、その著書や訳書は甚だしく多い。ちなみに、私の母は現在、88歳の米寿をこの秋に迎え、今は介護型の老人ホームに移っているが、加藤先生とほぼ同時代を生きてきたことになる。今はベッドの上で認知症になっていて、食事を除いてほとんど動けなくなっているが、この夏にほそぼそと会話して、口をついて出て来ることは、太平洋戦争で米軍の空襲で恐ろしかった体験であった。加藤先生もそのような厳しい戦中・戦後を歩まれた点は共通している。この本はそのような先生のキリスト教との出会い、そして真摯に牧師としての道を歩まれた軌跡を、後進の牧師たちが「聞き書き」し、対話した内容となっている。
 幼いときから、日曜学校、教会学校に通い、また、良き説教者たちと出会って、説教を中心に、いつしか牧師を目指され、当時はまだほとんどなかったと言ってもいい時代に説教学を日本に打ち立てて行かれたのである。私が改めて感心させられるのは、福音書のすべてについて、先生は説教集を刊行されていることである。もちろん、他の部分でもたくさんの説教集を出されているが、福音書の全体を説教集として出されている例は、日本ではほかには存在しないのではないか。
 さて、「聞き書き」して出されたこの本は、加藤先生を知るうえで、貴重な資料となるであろう。先生の息遣いや、人柄がにじみでているし、先生の伝道の生涯の中で、どんな恵みの多い出会いがあったか、それが先生の説教を生み出し、そのほかの著述や先生の神学を形作っていったかを知ることが出来よう。
 説教塾での先生の指導は、厳しいものである。うちのめされそうになった体験をした牧師たちも多いのではないか。しかし、先生の願いは少しでも牧師たちの説教が改善できることであり、日本の伝道が少しでも進展することなのだ。

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