2017年8月9日水曜日

「世界平和のために」(ミカ書第4章1節~5節)

ミカ書第41-5節、201786日(平和の主日、JELC)(赤)、エフェソの信徒への手紙第213-18節、ヨハネによる福音書第159-12節、讃美唱201(イザヤ書第22-5節)

説教「世界平和のために」(ミカ書第41節~5節) 

 私ども、日本福音ルーテル教会では、毎年8月の第一日曜日を、平和主日として記念し、世界平和のために祈りを合わせ、そのために思いを凝らし、決意を新たにするときとしています。
 いみじくも、今年の平和主日は86日となり、この日、原爆が広島に落とされ、それから72年を経たこの時、広島では世界平和を祈願する式典が行われていることでしょう。あの日の惨禍は、今なお続き、いまだに5万人もの人が行方不明だとのことであります。そして、世界では未だに紛争は絶えず、北朝鮮ではこのところ、核開発も勢いを増し、また、アメリカなどの大国も、自国第一主義を標榜する傾向が強まり、危惧されているのが現状であります。
 このような現実の中にあって、私どもは、今一度、聖書のみ言葉に目を向け、何を祈り、どのように考え、何をなすべきかについて、ご一緒に考えてみたいと思います。今日はいつもとは違って、第1朗読の旧約聖書ミカ書第41節から4節までを中心として学びましょう。
 ここには、驚くべきことが書かれています。実は、このミカ書の第4章以下、終わりの第7章までは、預言者ミカの手によるものではなく、後代の弟子たちの預言者らによって記されたものではないかと、今では考えられています。
 そして、今日の部分の前までが、ミカの預言で、そこには、アッシリア帝国の支配が迫っている中で、一向に悔い改めようとはしないイスラエルやユダの人々、不正や民を圧迫する指導者たちへの神の裁きの預言で満ちています。
 その後に、今日のまことに信じがたい、世界平和の実現とも思われる預言、救いと赦しの約束の託宣が語られているのです。これらのみ言葉は、バビロン捕囚の時代、あるいはバビロン捕囚から帰還して後に与えられた預言の言葉であると考えられています。
 ちょうど同じ記事が、イザヤ書の第21節から5節に記されていますが、その両者の関係については、今日は触れません。ただ、ミカ書の方がより詳しく書かれており、より深く考えられていると言え、そのために平和主日のペリコペー、聖書個所としては選ばれていると考えられます。
 今日のミカ書の預言の言葉は、およそ、以下のようなものであります。
すなわち、次のようなことが起こる。終わりの日々に、主の山、主の家の山が、すべての丘、山々よりも高くなり、すべての山の頭として、堅く据えられる。
 そして、多くの民、国民が、そのシオンの神殿のある山の周りに、流れ来たる。そして、彼らは言うのであります。さあ、我々は、主の山、ヤコブの神の家に向かって登ろうと。我々を、その神は、その道から教えられる。我々は、その方の道において歩もう。
 なぜなら、トーラー、主の教えはシオンから、主のみ言葉はエルサレムから出るからだと。そして、その方は、多くの国民を裁き、遠くまで強い国々を戒める、調停され仲裁されるというのであります。
 そして、彼らは、自分たちの剣を鋤に打ち直し、自分たちの槍をその刃を打ち延ばして刈り込み鎌とするのであり、国は国に対して剣を上げず、彼らはもう戦いに備えて学ぶことはない。そして、人は、自分のぶどうの木の下に、オリーブの木の下に座り、もはや何ものも脅かすものはない。なぜなら、万軍の主の口がそう告げたからだというのであります。万軍の主とは、ダビデが近隣の諸国と戦い、周囲の国をたいらげていったそのイスラエルの神でありますが、それは、天のみ使いの軍団でもあり、ラテン語に訳された聖書では、「全能の主」と訳し変えられています。
 さて、今日のペリコペーの最後のミカ書第45節は、文字通り訳しますと、「けだし、すべての民は、おのおのその神の名において歩む。しかし、私どもは、永遠の昔から、永遠に、私どもの神、主の名において歩むのである」となります。
 昔、イスラエルの人々は、主の名のもとに、部族が集まり、国を成していました。また、ダビデ、ソロモンの栄華の時代には、エジプトからユーフラテス川の近くまでを戦い取り、戦火の後に平和を謳歌した時代がわずかですがありました。そのような歴史をも踏まえたうえで、この預言者は、日々の終わりに世界中の国民が、ヤコブの神こそ、まことの神だと言って、主の山に登ろうと流れ来たる日を預言し、主の教える道に歩む日が来ると約束しました。
 しかし、今日の終わりの5節では、すべての民は、おのおのその神の名において歩むが、私どもは、永遠に我らの主、神の名において歩むと、いったん譲歩したうえで、自分たちの決意を新たにして、今日のみ言葉を終えているのであります。
 それは、私ども人間の罪深さ、一筋縄には、まことの唯一の神に従いえない罪の現実を見据えた預言者の信仰告白の言葉なのでありましょうか。

 今日の聖書の言葉は、それ以後の長い歴史の中で、人々に強い影響を与え続けてまいりました。その一つの例として、戦前の日本の貧しさとの戦いの中で、生活協同組合運動に行きついた賀川豊彦牧師の働きが挙げられます。協同組合国家によって、世界に平和をと考えた彼は、世界連邦構想をも展開しつつ、1960年に、世界平和を祈りながら、天に召されたのでした。アーメン。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

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